メガロ・メテオロン修道院
メテオラ奇岩群の西部、最も高く幅広い奇岩の上にソティロス・メタモルフォシに捧げられたこの修道院は建てられている。「プラティリソス」と呼ばれるこの岩は、巨岩群の中でも最も面積が広く標高613M。この地への登頂および修道院建設は、偉業と言える。
今日、修道院集合体の正面には、修道院に導く高さ106Mの乗降塔が構えている。塔には木製の梁が備えられ、古い網状の袋が吊り下がっている。(君主ネアゴェ・ヴァサラヴ寄贈)塔の左側、北側の壁には古い木製の吊梯子の一部が残されている。
1922年に古い木製の吊梯子は岩に彫りこまれた200段の階段に換えられた。これによって訪問者たちは修道院の中央の正門に導かれる。近年の修復工事によって、階段はより昇り易くなっている。入り口の右側には、古いバルコニーがあり、ヴリゾニと呼ばれる木製のエレベーターが、古い網と共に残されている。
この地への最初の入植者であり修道院の創建者でもあるメテオラの克肖者アサナシオス(1302/3年~1380年)は14世紀の偉大な修行士で、彼によってメテオラの修道院共同体の基が築かれた。
克肖者アサナシオスは修道院の正面玄関の左側に今も存在する生神女の礼拝堂の小さい独居室で修行生活をした。克肖者アサナシウスと並んで、後に修道士名をイオアサフと呼ばれたイオアニス・ウレシス・バレオロゴス王(1349/50年〜1422/3年)も修道院創建の協力者であった。
メタモルフォシ・ソティロス(キリストの変容)に捧げられた聖堂は、克肖者アサナシオスによって建設が始められ、1387年~1388年ごろ克肖者イオアサフが修道院典院の時代に完成した。後年、第三の創建者としてイピロス地方出身の修道院典院修道士シメオンの名も挙げられた。1545年に教会と玄関口を中心に、既存の教会を内陣に改修されたメタモルフォセオスの聖堂が創設され、1552年には輝かしい装飾で飾られた。
メタモルフォセオス聖堂はギリシャの最高傑作とされる聖堂の一つである。聖堂の内陣はほとんどが1483年のフレスコ画製法の宗教画で埋められている。セサリア地方の稀少なパレオロギアスマケドニア絵画派の傑作である。主教会とその入り口の壁画は、1552年に完成し、クレタ派の著名な宗教画家ジョルジの手によるものである。
現在の金塗りの木製彫刻が施された聖堂の内陣障壁の構造は、二部に分かれている。美しい門と内陣門の上の穴の開いた部分は1634年〜1635年にイオアヌゥの手によって飾られたものである。内陣障壁の大部分は長年の損傷が多く見られ、1791年に職人コンスタンティノス・リノトピティとコスタス・メチョヴィティによって改修及び復元作業が行われた。
16世紀にはメガロ・メテオロン修道院は文字の学校及び写本研究所として運営された。18世紀の終わり聖歌隊長でもあった修道司祭パルセニオス・オルフィディス(1807年)が修道院典院を務めた頃、修道院には大きな展開が見られた。1789年には、使徒コンスタンティノスとエレニの単廊礼拝堂を建設した。聖堂の南東側に既に設置されていたティミウ・プロドロモスの礼拝堂も現在の形に完成した。
聖堂の北東部には、1557年克肖者修道院典院シメオン制作の見事な食堂が建てられている。食堂の南側の外の部分には、ヴラシオス・チョチョニス(2008年)の直筆による名場面「栄光の王キリスト」描かれている。この作品の中ではイエス・キリストは、旧約聖書の預言者や正義漢達の間に描かれて
いる。少し下の部分には、イエス・キリストの到来と救世主としての偉業を言葉で表した古代ギリシャの賢人達(詩人、哲学者、雄弁家)が描かれている。
食堂の北東部には、1572年に建てられた旧養老院-療養所がある。1998年に典型的な方法で修復され現在では貴重な聖遺物を持つ『ヴィザンティン宝物聖遺品博物館』となっている。一階(地上階)には14世〜16世紀の聖画イコン、金糸刺繍墓碑銘、典礼祭服、金糸刺繍製品等の素晴らしい作品が展示されている。二階の東側にはヴラシオス・チョチョニスによって描かれた近代致命者達の宗教画が展示されている。その他、16世紀に作製された有名な木製彫刻の十字架等の、貴重な古書の数々も並べられている。同じ階の中央部には、9世紀〜19世紀に書かれた貴重な歴史資料と精巧な写本、羊皮紙とchartoa、本物の芸術遺物が展示されている。メガロ・メテオロン修道院の所有する手書きの書籍は668冊に及ぶ。
食堂がある下の階にも、本物の展示物や複製遺物を展示した「ギリシャ史の軌跡博物館」がある。広間は遺物展示室としてだけではなく、ギリシャの歴史の学びの場としても国内外からの訪問客に応対している。
民族博物館までの細長い廊下は「戦争時の絵画(1912-13年〜1940-41年) 」の通路と呼ばれ、バルカン戦争(1912年-1913年)とギリシャ・イタリア戦争(1940年-1941年)時の色付きの石版画が掲げられている。修道院には、実際に使われていた昔の台所、窯や様々な用具の展示もあり、改修された独居室や昔の木工工場などの見学もできる。